リルケ

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淸水書院, Feb 15, 2001 - 237 pages
リルケが愛や孤独の詩人というのは本当だ。彼が広く愛されるのも、詩に読者が共通する何かを感じとるからである。だがそれだけでは、何故リルケが世界的に読まれるかを説明できない。リルケは哲学用語を用いずに現代の人間と事物の存在内容を根底から問い、歌った詩人だった。その思想性は、日本の俳句に出会い、短詩型と俳人の詠視に西洋のエピグラムとは異質の、自分の詩との深い関わりを認める鋭い柔軟性に貫かれていた。彼の詩精神のこの越境性こそリルケの巨きさにほかならない。この巨きさに少しでも近づくことが、あの何故への我々の応答であろう。本書は、彼がいかにして作品を生み出したかを生涯にわたり叙述し、それらが異なる文化・言語圏へと遠く越え出ても示しつづけてやまない豊饒な文学世界へのひとつの道案内となることを念じた。

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