悲劇と福音: 原始キリスト教における悲劇的なるもの

Front Cover
淸水書院, Mar 21, 2001 - 186 pages
人の心をゆさぶらずにいない「悲劇的なるもの」という要素は、原始キリスト教の成立と発展にいかに関わったか―。小書はまず、アリストテレス『詩学』を手がかりに、「悲劇的なるもの」の基本的条件を探り、それらの要素を最古の福音書マルコに適用する。マルコこそ、最も「悲劇的」な内実の福音書である。同要素は、さらにキリスト教最初期の事件そのものにも適用され、イエスの死後のエルサレム原始教会の誕生、および使徒パウロの事柄把握が、「悲劇的」感性の展開した姿として把握される。「悲劇的なるもの」との出会いこそ、後に「キリスト教」として発展する運動の母胎であった。原始キリスト教は、悲劇に遭遇した者たちの心の軌跡として読み直すとき、思いがけない生々しさで甦る。

Other editions - View all

Bibliographic information