文明の中の水: 人類最大の資源をめぐる一万年史

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新評論, 2004 - Reference - 352 pages
水の利用から水の酷使へ、現代の危機を照射。
水問題の核心を捉える比較文明論の新展開!

地球が生みだした生物、人類がいま地球の限界にふれようとしている。危機は5000年の文明史、特に20世紀の産業文化によって地球が数億年かけて貯蓄したエネルギー源をあっという間に使い尽すことから始まった。そして21世紀、それはついに生命と生活の根源にある水不足として直撃しようとしている。人類を他の動物から区別する労働による生産は彼らの絢爛たる文明を生みだしたが、それは明日のことを考えない振舞であった。確かに、原始農耕がたちまち自然の限界にぶつかったとき、厖大な労働による治水灌漑によって突破口を開き、ひき続いて多様な気候に巧妙に適応して、諸文明を開花させた。しかし、今日では文明の周辺部であり「第三世界」の中心である中国がまさに現代文明によって汚染の極にあって、水問題もおそらくこの国でまず噴出すると予想される。危機はまさに全人類的なのである。しかも、水問題は毎年の気候環境のなかでじわりじわりと毒素がきいてくる慢性病であり、その実体は文明の中心部における人口減少と周辺部における人口爆発という行動様式の恐怖の乖離と、双方がとらわれている文明の強迫観念である。本書は水の諸様態をかりてこの状況をもたらした人類の姿を見つめたものである。

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