オキクルミのぼうけん

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小峰書店, 1998 - Ainu - 31 pages
この物語は、アイヌ語で語られたウパシクマ(故事来歴)を現代の日本語に直し、さらに絵本の文章にするため手を加えたものです。いま私の住んでいる沙流川のほとりは、オキクルミの神が住まわれたという伝承の地です。ここでオキクルミの神は、アイヌに生活のすべてを教えてくれたというわけで、この話は、日本の民話でいえば「桃太郎」や「花さかじいさん」のように、私たちにはいちばんなじみの深いものです。アイヌモシリができたとき、神の国からだれかを派遣して、人間に生活を教え、神の存在や神の祭り方を教えることが必要になったわけです。そこで、オキクルミの神が受ける三つの試練(正しくは“無理難題”と訳した方がよい)は、人間の世界へ行って出合うことを、まず経験させておこうという意図だと考えられます。ですから、はじめの二つの試練に耐えたことで、人間の国で生活していけることが証明できたわけですから、三つ目の試練に失敗しても、神たちはオキクルミが人間の国へ行くことをとめなかったのでしょう。物語のおわりに、爆発がおこって、オキクルミは神の国へ戻りますが、ウパシクマの形として、神の国からきたものは、死ぬまで村にいることはなく、役目が終わると必ず神の国へ戻ることになっています。この物語も、その形をとっているわけです。

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