英国の幽霊城ミステリー

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エクスナレッジ, 2023 - Reference - 216 pages
今なお城をさ迷う幽霊たちの物語の中に、
英国の歴史を読み解く鍵がある

英国においては、言ってみれば先住者である幽霊たちを追い出すという発想は一般的ではないようだ。日本のように、視たら祟られる、呪われる、というような話はほとんどなく、英国の幽霊はほとんどの場合、ただそこにいるだけだ。悪さをするわけでもないなら共存しよう、というのが英国人の考えらしい。むしろ、歴史を体現する存在である幽霊に親しみを感じ、価値を見出す向きすらある。(中略)
幽霊を恐れながらも尊重しようという英国人の姿勢からは、幽霊は歴史的事実に基づく存在であり、民衆の共感、同情、尊敬の念によってこの世にとどめられているものであるとする、彼らの幽霊に対する意識が見てとれる。
――「CASE1 ウィンザー城と25人の幽霊」より抜粋

幽霊は英国の歴史を背負って現れる。

ハットフィールド・ハウスではエリザベス1世が少女の姿で現れる。
彼女が25歳で英国女王に即位する前の日々を過ごした、穏やかな記憶が残る場所だからだ。
エリザベス1世の母アン・ブーリンは、ロンドン塔を首のない姿で徘徊する。
ヘンリー8世がアンと離婚したいがために、彼女に姦淫罪を着せてロンドン塔で斬首したのだ。
男児欲しさに六回結婚し、妻を二度処刑したヘンリー8世は、埋葬されたウィンザー城内で足を引きずりながら歩き回っている。
晩年の彼は足の腫瘍に苦しみ、肥満した身体を引きずって移動したのだ。

幽霊を恐れず、追い出さず、寄り添う民衆の意識が彼らを城にとどめている。
幽霊を幽霊たらしめている背景をひも解くことで、英国の歴史が見えてくる。

ロンドン生まれの小説家・織守きょうや氏が英国の幽霊と城にまつわる歴史と、そこに隠された秘密を紐解いていく。
数多の英国の住宅を訪問し、その魅力を描いてきた山田佳世子氏がイラストで幽霊城を物語る。
英国の歴史の扉を開ける鍵となる一冊。

建築史家の中島智章氏による幽霊城の解説つき。

About the author (2023)

文織守きょうや(おりがみ・きょうや) 1980年ロンドン生まれ。2013年『霊感検定』(講談社)でデビュー。 2015年『記憶屋』(KADOKAWA)で日本ホラー小説大賞読者賞を受賞。 ほかの作品に『黒野葉月は鳥籠で眠らない』(双葉社)、 『ただし、無音に限り』(東京創元社)、『響野怪談』(KADOKAWA)、 『花村遠野の恋と故意』(幻冬舎)などがある。 『花束は毒』(文藝春秋)で第5回未来屋小説大賞を受賞 イラスト山田佳世子(やまだ・かよこ) 甲南女子大学文学部英米文学科卒業後、 住環境福祉コーディネーターとして住宅改修に携わる。 その後、町田ひろ子インテリアコーディネーターアカデミー卒業、 輸入住宅に従事する工務店で設計プランナーとして経験を積み、 二級建築士取得。現在はフリーの住宅設計プランナーとして独立。 著書に『日本でもできる!英国の間取り』(エクスナレッジ)などがある

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